SINET6のネットワークを活用したスポーツ×テクノロジーの融合

鹿屋体育大学は、日本で唯一の国立体育系単科大学です。スポーツとテクノロジーを融合した教育と研究を推進するためSINETのネットワークを活用しています。これらの取り組みについてスポーツ情報センター 和田智仁教授と今泉拓助教にお話を伺いました。(インタビュー実施:2026年7月23日)

鹿屋体育大学スポーツ情報センターの概要について教えてください。

鹿屋体育大学スポーツ情報センター

和田氏:鹿屋体育大学は1981年に設置された日本唯一の国立体育系単科大学です。全国からスポーツに関心を持つ学生が集い、学部生・大学院生を合わせて約800名が在籍しています。学生の90%以上が競技志向の運動部に所属し、日々スポーツに関する勉学に加え競技力向上にも励んでいる点に特徴があります。

スポーツ情報センターは1998年に設立され、一般的な大学における情報処理センターの機能に加え、体育系単科大学ならではの専門的なミッションとして、スポーツ科学の支援を推進しています。2000年代からは順次、教室だけでなく体育館やグラウンドにWi-Fiを設置し、スポーツに関するデータを収集できる環境を整えてきました。2015年には大学でiPadが必携化されましたが、これもWi-Fi環境があったからこそ実現できました(現在はノートパソコン必携)。

具体的なスポーツデータ収集に関する設備についてお伺います。

フォースプレート完備のバッターボックス

和田氏:スポーツ情報センターでは、2002年に光学式モーションキャプチャーシステムおよびフォースプレート(床反力計)を導入してきました。光学式モーションキャプチャーは、身体表面に反射マーカーを貼り付け、それを複数台の赤外線カメラで同時に撮影することで、人間の動作を三次元座標データとして正確にデジタル記録する装置です。床に設置されたフォースプレートとモーションキャプチャーを連動させることで、アスリートの動きや力の発揮具合などを定量的に解析することができます。

今泉氏:昨今のスポーツ科学の発展に伴い、対戦相手の分析や自チームのパフォーマンス評価を行うスポーツアナリストの需要がプロスポーツ界で高まっています。スポーツ情報センターでは、プロ球団やナショナルチーム等で使用されているスポーツ解析専用ソフトウェアを導入し、学生や研究者へ貸し出しおよび操作サポートも行っています。こうしたアナリスト育成支援の成果もあり、プロチームや日本代表チームでアナリストとして活躍する卒業生も輩出しています。

サッカーグラウンド横のやぐら

鹿屋体育大学の特徴的な設備の例をご紹介します。サッカーグラウンド横の「やぐら」には、サッカーの試合中の選手やボールをリアルタイムでトラッキング(追跡)する装置が導入されています。このシステムはサーバーと大容量データをやりとりするため、やぐらまでは直接光ケーブルを敷設しました。屋内実験プールには、水中モーションキャプチャーやその他の撮影環境が整っています。写真にある加減圧可能なチャンバー内の回流水槽(流水プール)では高地と同じ環境でのトレーニングや測定ができるようになっています。SPORTECスポーツパフォーマンス研究センターには、世界最長となる50mのフォースプレートシステムが設置されており、スタート地点の左右両手足を含めてトラック下に埋め込まれた54枚のプレートによって、スタートから50m地点までの床にかかる力の大きさと向き、作用点の位置を測定することができます。走行直後にはデータの分析結果をモニタリングできるように研究者がシステムを作りこんでいます。鹿屋体育大学には日本トップクラスの選手も多く測定に来ています。

ネットワーク構成について教えてください。

ネットワーク構成図(鹿屋体育大学提供)

和田氏:鹿屋体育大学のキャンパスには多様な屋内外競技施設が配置されています。学内ネットワーク構成は、情報センターを中心としたスター構成になっています。建屋間は地中埋設の光ファイバーケーブルで接続され、外部ネットワークとはSINETを介して10Gbpsの高速回線で接続されています。ネットワーク構築における特徴は、有線LANを主体として、移動端末・計測機器接続用にWi-Fi環境を整えていることです。鹿屋体育大学では屋外競技場や体育館などが教育や研究の現場になるので、それらまで基幹配線を有線光ケーブルで引き込み、安定した通信環境を担保しています。

今泉氏:こうした安定した通信環境があるからこそ、大規模な計測が可能になっています。例えば、バッティング動作のモーションキャプチャー実験を朝から晩まで継続することや、地域の中高生を対象に100人規模の計測会を実施することができます。こうした計測では、大容量のデータが連続して発生し、多数の機器を同時に利用します。それを安定して収集・保存し、分析につなげられることが、本学の研究基盤の大きな強みです。

和田氏:錦江湾に面した「海洋スポーツセンター」ではヨット、ウィンドサーフィンなどの海上スポーツ活動が日常的に行われています。ここに設置したカメラの映像を現在は24時間YouTube経由で配信しています。今後は海上から陸上へのリアルタイムデータ伝送といったチャレンジも検討したいと考えています。

また、鹿屋体育大学は、体育学の博士課程を設置している国内でも数少ない機関でもあります。SINETの高速・高品質な通信網は、研究データの送受信のみならず、九州地区を中心とする国公立大学(熊本大学、宮崎大学など)との「連携大学院教育プログラム」でも活用しています。このSINETのネットワークを介した遠隔講義により、大学院生が連携協定校に研究活動の基盤を置きながら鹿屋体育大学の博士号を取得できる仕組みを構築しています。

今後の展望について教えてください。

和田氏:現在、スポーツ×テクノロジーが世界的に注目されていると感じています。スポーツ基本法やスポーツ基本計画においても「情報通信技術(ICT)の利活用」が明記され、国の政策としても科学的データに基づくスポーツ振興が強く推進されています。鹿屋体育大学は、そうした科学的根拠に基づいた指導ができる次世代の指導者・教員を世に送り出す役割を担っていきたいと考えており、その実現においてネットワーク環境はますます重要になってくると思います。

ありがとうございました。