インターネットを利用した国際遠隔講義

琉球大学 総合情報処理センターでは、インターネットを利用した国際遠隔講義を、ハワイ大学など7大学の連携で実施しています。
その概要と今後の取り組みについて、お話を伺いました。

高良 富夫氏
高良 富夫氏

琉球大学 総合情報処理センターでは、インターネットを利用した国際遠隔講義を、ハワイ大学など7大学の連携で実施しています。
その概要と今後の取り組みについて、琉球大学 学長補佐 工学博士 高良 富夫氏(前・総合情報処理センター長)と琉球大学 総合情報処理センター 技術職員 大川 康治氏にお話を伺いました。
(インタビュー実施:2008年6月9日)

まず、琉球大における総合情報処理センターの役割についてお聞かせ下さい。

高良氏: 全学に対して、コンピュータおよびネットワークの基盤を提供することが当センターのミッションです。各学部に基礎教育のためのPCを配置するなど、様々な取り組みを行っていますが、最近ではネットワークの整備が大きいですね。今や講義や研究はもちろんのこと、学内の事務でもネットワークが使えないと仕事になりません。事務系システムを管理している部門とも連携して、IT環境の維持・改善に取り組んでいます。
また、琉球大学は、比較的早くから高速なネットワークを導入してきましたので、学長の年頭挨拶や教員向けの講演会などを学内にビデオ配信するといった取り組みも行っています。

大学のIT環境を構築・運用していく上で、特に注意されている点などはありますか。

大川 康治氏
大川 康治氏

大川氏: ユーザーがストレスなく利用できる環境を提供することも大事ですが、もう一つ重要なのがセキュリティの問題です。初心者のユーザーがウィルス感染を引き起こすような危険もあるため、技術面の対応だけでなく、セキュリティに対する啓蒙活動なども必要と考えています。
また、社会人入学された方など、PCのスキルが十分でない方へのフォローも重要なテーマの一つです。

さて、琉球大では、SINETを利用してハワイ大学など7大学での国際遠隔講義を実施されています。 これは、そもそもどういう経緯から始まったのでしょうか。

高良氏: もともと琉球大とハワイ大は以前から交流が盛んで、ハワイ州の国際的研究機関であるハワイ東西センターを含めて、お互いに教員を行き来させるなどの活動を続けてきました。 そうした中で、2005年初頭に実施したのが、ハワイ大と琉球大を結んだテレビ会議プロジェクトです。お互いに人を派遣していましたので、近況報告も兼ねてネットを使ったテレビ会議をやれないかと考えたわけです。
このプロジェクトは無事成功し、その後も両大学の学生同士でテレビ会議を行ったり、教育学部の附属小学校ではハワイ・沖縄で小学生会議を行ったりしてきました。ハワイ大学では、こうしたインターネットを利用した国際連携を積極的に進めており、今回の国際遠隔講義のプロジェクトが立ち上がった際にも、当大学に一緒にやらないかと提案があったのです。

以前からの交流やテレビ会議での実績が、国際遠隔講義につながったというわけですね。
講義はどのような形で行われているのですか。

大川氏: 相手方の教室の様子をカメラで撮影してもらい、その映像をSINETを使ってこちらの教室に中継しています。資料は、ハワイ大のe-learningシステムでネット配布されます。
2005年に初めて実施した際には、モニターが1つしか使えない通常のテレビ会議システムを利用していたため、ハワイ大側で教室の映像と資料の映像を1画面に合成して送ってもらっていました。
しかし現在では、3つのモニターを利用して、こちら側の教室を映した映像、相手方の教室の映像、資料の映像をそれぞれ別々に表示させています。また琉球大側から講義を行う場合は、こちら側の教室を映した映像と資料の映像の2種類の映像を相手方に配信しています。

講義はどのような内容なのですか。

高良氏: 2005年から2007年にかけては、「国際環境学」と「災害管理および人道援助」の2コースを開設し、後期にそれぞれ15回ずつの講義を行いました。
2007年後期の講義を例に取ると、前者では「地球のモニタリング:地球監視技術」「生物多様性と気象変動」、後者では「災害危機に対処するための地域社会の強化」「島嶼地域における災害」などのトピックが題材として取り上げられています。
また、琉球大からも、いろいろと面白い情報を発信していますよ。たとえば、世界最大の津波が起きたのは、石垣島を中心とする八重山諸島であることをご存じでしょうか。この津波は1771年に発生し、海抜約90mにまで波が達したという記録や痕跡が残っています。海外の受講生にとっては、こうした話題も非常に興味深かったようです。

リアルタイムで遠隔講義を行うとなると、時差の問題なども出てくると思うのですが。

大川氏: 確かにハワイと日本では-19時間の時差がありますので、お互いの都合の良い時間に合わせるようにしています。たとえば日本で午後1時から講義があるとすると、先方では前日の夕方6時の講義になるといった具合ですね。
また、通常の時間割をそのまま適用しても先方の時間割とタイミングが合わないので、琉球大の2コマ分の時間帯を遠隔講義に割り当てるようにしています。

太平洋をはさんでの講義ですが、ネットワーク的な課題などはありましたか。

大川氏: この講義の始まった頃にはいろいろと苦労もありました。距離が遠いということもそうですし、沖縄の高温多湿な環境に学内のネットワーク機器が耐えられず、頻繁に障害を起こすといったこともありました。しかし、機器の更新やネットワークの強化を図ったことで、現在ではトラブルはほとんどなくなっています。 特にSINETのサービスがSINET3になってからは、非常に安定した通信が実現できています。ネットワーク障害が原因で、講義を中断しなければならないといった事態は今まで一度も起きていません。
遠隔講義で使用する帯域はだいたい5~6Mbpsくらいですが、SINETの回線も1Gbpsに増強されましたので、ネットワーク面での不安はまったく感じていないですね。SINET3の信頼性・安定性には非常に満足していますので、今後もこれまで通りの安定稼動をお願いできればと思います。

最後に、国際遠隔講義の今後についてお伺いできますか。

高良氏: 今年の後期からは、従来の2コースに加えて「開発途上国における情報通信」をテーマにした講義を開始する予定です。
国際遠隔講義は、「アジア・太平洋地域との交流を中心として世界に開かれた国際性豊かな大学を目指す」という琉球大の理念とも合致しますので、今後もどんどん発展させていければと思います。
また、SINET3や映像中継のインフラは、今回のプロジェクト以外にも応用できますので、国際間の会議や講演など他の用途にも積極的に活用していきたいですね。

ありがとうございました。