e-ポートフォリオの構築と運用

九州産業大学では、SINETクラウドサービスを活用した「e-ポートフォリオ」を構築・運用しています。
ここでは、学生が自らの目標を意識しながら日常の学修を進めることで、社会人としての基礎力を養う取り組みを進めています。
その概要と成果について、お話を伺いました。

藤崎 渉氏
藤崎 渉氏

九州産業大学では、SINETクラウドサービスを活用した「e-ポートフォリオ」を構築・運用しています。 ここでは、学生が自らの目標を意識しながら日常の学修を進めることで、社会人としての基礎力を養う取り組みを進めています。
その概要と成果について、九州産業大学 工学部機械工学科教授 藤崎 渉氏と同 教育研究係長 兼 情報基盤係長 橋本 忍氏にお話を伺いました。
(インタビュー実施:2015年3月4日)

まず、九州産業大学の教育的な特色について教えて頂けますか。

藤崎氏:本学には人文・社会・理工・芸術系など多様な学部・学科がありますが、これらすべてにおいて「KSUプロジェクト型教育」と呼ばれる取り組みを推進しています。 これは地域の企業や公的機関、行政機関などとコラボレーションしながら新たな価値を産み出すもので、社会人に欠かせない実践力・共創力・統率力を身に付けることを目的としています。 既に商品開発や地域のプロモーション、イベントプランニング、先端研究開発、社会貢献など、約120件のプロジェクトを実施しています。

情報化に対する取り組みについてはいかがでしょう。

橋本 忍氏
橋本 忍氏

橋本氏:近年では大学運営においてもICTが極めて重要なインフラになっています。 そこで2014年度に、全学ネットワーク「KIND」を10年ぶりに全面刷新しました。 ここではセキュリティのさらなる強化を図ると同時に、約600ヶ所の無線LANアクセスポイントも設置。キャンパス内のどこにいても自由に情報を活用できるよう改善を図っています。
また、最近ではネットワーク帯域の逼迫も大きな課題になっていますので、SINETの協力を得て対外回線を1Gbpsから10Gbpsに増速しました。 おかげで現在では快適なネットワーク活用が行えています。

さて今回、「e-ポートフォリオ」の構築・運用に取り組まれたわけですが、その背景にはどういうことがあったのでしょうか。

藤崎氏:本学では幅広い分野の専門教育を行っていますが、ただ知識を学ぶだけでは社会人に必要な仕事力は身に付きません。 特にここ数年は経済環境が厳しかったこともあり、学生が就活で苦戦するような場面も少なくありませんでした。
こうした状況を打開するための方策として目を付けたのが、経産省が提唱する「社会人基礎力」です。 ここでは若者が自らの能力や適性に気づき、成長していくためには、「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」の3つの能力要素を整理・明確化することが有効と述べられています。 これは本学の置かれている状況ともまさに合致するものでしたので、e-ポートフォリオの導入によって学生の社会人基礎力を磨く取り組みを進めたいと考えたのです。

具体的な取り組みの内容を教えて頂けますか。

藤崎氏:入学から卒業までの4年間を通して、「目標設定」「日々の学習」「達成度振り返り」「改善工夫」のPDCAサイクルを廻していきます。 まず入学時には自分史の作成や卒業までの目標設定を行い、過去の自分の振り返りと未来の自分の将来像を描く作業を行います。
さらに各学年度/学期においても、より具体的な目標設定と成果管理を行い、これを指導担当教員と共有します。 たとえば私が所属する機械工学科の学生であれば、「自分の専門分野の技術資格取得を目指す」といった具合ですね。
また、e-ポートフォリオでは、基礎的スキル、コミュニケーション力、読み書き、マナーといったジャンルごとに様々な質問項目が用意されており、これらそれぞれについて年度末までに自分が目指すスコアを記入してもらいます。 現場の第一線で活躍する社会人のレベルを「5」とした時に、自分がどのレベルまで到達したいかを数値で表してもらうんですね。 これを学年次ごとにチャート化していくことで、自らの成長が実感できるというわけです。 もちろん、その年度で思うような成果が挙げられなかった時には、担当教員が相談に応じたり指導を行ったりします。
その他に、日誌風にいろいろなことを記入できる「Liveノート」という機能も備わっており、ここには就職面接を想定した質問の答や、自分が読んだ本の読後感などを書いてもらっています。 これは後で検索ができますから、企業面接の前に読み返して就活に生かすといった使い方もできます。 ちなみに電気情報工学科では、卒業研究の進捗状況報告などにもこのLiveノートを活用しています。

学生本人の振り返りに役立つのはもちろん、大学側としてもよりきめ細かい指導ができそうです。

藤崎氏:実際にそうした点でも成果が上がっています。 たとえばこれまでのデータから、GPA(成績表価値)が2.0未満で口下手な学生は就活に苦労するということが分かっていました。 そこでこの条件に該当する学生13名に対し、自分史などの質問項目を使った面接練習を延べ21回にわたり実施しました。
その結果、全員が企業からの内定を獲得できたのです。「面接練習と同じ質問が出たので、落ち着いて対応できた」と、学生も喜んでいましたね。 この実績を踏まえて、その後はGPA2.0以上の学生に対しても同様の取り組みを実施しています。

システム的な特徴についてもお伺いしたいのですが、今回のe-ポートフォリオではSINETクラウドサービスを利用されていますね。

橋本氏:最近では本学でもクラウドを利用するケースが増えており、図書館システムや入試合格発表システムなど、様々なサブシステムで外部事業者のサービスを利用しています。 今回のe-ポートフォリオについても、まず工学部のみで実施するということでしたので、初期費用が抑えられ拡張も簡単なクラウドを選択しました。 とはいえ、今回のe-ポートフォリオは学生の個人情報を扱う重要なシステムですので、セキュリティ対策が大きな課題となります。
その点、今回採用したNTTデータ九州の「LiveCampusポートフォリオシステム」は、SINETクラウドサービスでの接続に対応していますので、セキュアで高速なシステム環境が容易に実現できます。 オンプレミスで構築した学内システムと学外のサービスを安全かつシームレスに利用できるというのは、本学にとっても非常に大きなメリットでしたね。 また、構築に際してはNIIの支援も受けられましたので、スムーズにプロジェクトを進めることができました。

今後はどのような形でe-ポートフォリオを発展させていかれますか。

藤崎氏:工学部は本学の中でも最も就職・進学率が高く、例えば機械工学科の昨年度実績では約96%と九州全域で見ても最高レベルにあります。 e-ポートフォリオもその一端を担っていることと自負していますので、今後も利用率のさらなる拡大を図っていきたい。また、工学部以外の学部でも導入検討を進めたいという話も出ていますので、これまでの経験を生かして積極的な貢献を果たしたいですね。 もちろん、そこではセキュアで高信頼なネットワークが不可欠ですから、SINETの支援にも大いに期待しています。

ありがとうございました。