対外接続にSINETを活用した全学情報ネットワーク基盤「UTnet」

東京大学 情報基盤センターでは、全学情報ネットワーク基盤「UTnet」の対外接続にSINETを活用し、大学運営や先端学術研究の支援に役立てています。
その概要について、お話を伺いました。

下田 哲郎氏
下田 哲郎氏

東京大学 情報基盤センターでは、全学情報ネットワーク基盤「UTnet」の対外接続にSINETを活用し、大学運営や先端学術研究の支援に役立てています。
その概要について、東京大学 情報基盤センター ネットワーク部門ネットワーク係長 下田 哲郎氏にお話を伺いました。
(インタビュー実施:2011年12月22日)

本活用事例では、これまでも東大で先端研究を行っている方々の取材を行っていますが、情報基盤センターについては今回が初めての登場となります。
そこでまずは、東大のITインフラ事情について教えて頂けますか。

下田氏:承知しました。現在東大では、教職員と学生合わせて約4万人が在籍しています。また、本郷・駒場・柏・白金・中野の各キャンパスをはじめ、全国50ヶ所以上で遠隔研究施設等を運営しています。
これらの間を結ぶのが、「UTnet」と名付けられた全学情報ネットワーク基盤です。初代UTnetは1991年に構築されましたが、現在は3代目となる「UTnet3」が稼働しています。 私の所属するネットワーク部門では、このUTnetの構築や運用監視を主な業務としています。
ちなみに情報基盤センター内には、その他にも、情報処理教育の支援を行う情報メディア教育部門、図書館系のシステムを担当する図書館電子化部門、スーパーコンピュータシステムを運用するスーパーコンピューティング部門、センターの事務を担う事務部が存在しています。(http://www.itc.u-tokyo.ac.jp) 最近では教育・研究分野だけでなく、電子メールをはじめ、学内向けの事務システムや就労システムなどがオンライン化したことで業務系データもUTnetをよく通るようになり、ネットワークインフラの重要性はこれまで以上に高まっています。 よく「ネットワークは電気・水道・ガスと並ぶライフライン」などといわれますが、今や水道やガスよりも重要度は高いかも知れませんね(笑)。

これほど大規模な環境となると、安定運用を維持していくのも大変だと思うのですが。

下田氏:そうですね。ネットワーク部門は教職員合わせて15名ほどの体制ですから、運用管理や保守に掛けられるマンパワーにも限りがあります。 そこでUTnetでは、ネットワークを主要拠点間を結ぶ「基幹ネットワーク」と各建物内に敷設された「支線ネットワーク」に分け、我々は全学のバックボーンである基幹ネットワークの運用に注力するようにしています。
具体的には、各建物内に基幹ネットワークに接続するためのエッジスイッチ(L2スイッチ)を1台設置しており、エッジスイッチから先の支線ネットワークについてはそれぞれの部局のネットワーク担当者に運用管理をお願いしています。 このエッジスイッチはちょうどSINETのエッジノードと同じ役割を受け持っていますから、東大全体がいわば小さなSINETのような構成と言えますね。
また、予防保守と運用管理負荷軽減の観点から、エッジスイッチについてはインターフェイスの種類や需要を考慮しつつ定期的な更新を行なって障害の発生を防止するようにしています。 とはいえ、これも台数が200台以上ありますから、ある程度対象を絞って順番に交換するようにしています。

UTnetとSINETの関係はどうなっているのですか。

下田氏:UTnetでは、対外接続用に3つのネットワークを利用しています。 一つはWIDE Projectが運用する「WIDE」、もう一つはNICT(情報通信機構)が運用する「JGN-X」、それにSINETです。 特にWebやメール、テレビ会議といった日常的に利用される生活通信については、ほとんどがSINETを通ってインターネットへ出て行きます。それだけにSINETが果たす役割は非常に大きいですね。
また、先端学術研究を支えるという意味でも、SINETの存在は非常に重要です。 本活用事例でも神岡素粒子研究施設、素粒子物理国際研究センター、地震研究所などが登場していますが、こうした先端学術研究ではここ数年でデータ容量が飛躍的に増大しています。 また、2012年4月には次期スパコンが稼働し、世界一奪還で話題になった「京」や全国のスパコンとも通信が行われるようになります。これによって、データ通信量のさらなる増大が見込まれていますから、SINETの果たす役割もますます大きくなりますね。

それだけトラフィックが増えるとなると、運用側としても対応が大変そうですね。

下田氏:「とにかく大容量のデータを流したい」というのが全てのユーザー側の願いですからね(笑)。 ただ、我々としても可能な限り要望に応えていきたいと思っていますので、大容量データを取り扱う研究が始まる際には、なるべく計画段階で相談してもらうようにしています。いきなり対応するのは難しいとしても、あらかじめ事情が分かっていれば準備もできますので。 UTnetの環境についても、SINET4への移行に伴って本郷の接続帯域を10Gbpsから20Gbpsに増速するなど様々な手を打っています。

SINET4のお話が出ましたが、SINET3から移行したことによるメリットなどはありましたか。

下田氏:基本的なサービスは従来のものを踏襲しているので、ユーザー側から見た時には特に大きな変化はありません。 ただ、SINET4では、一般ノードへ接続する際などの構成がダークファイバ+WDMになりましたから、より多くの帯域が必要になった場合の対応が容易ということは言えますね。 以前の構成だと、専用線だったので回線や伝送装置を丸ごと取り替えたりしなくてはなりませんでした。その点、現在では、両端のWDMモジュールを追加するだけで簡単に帯域が拡張できます。

SINET4への切り替えについては如何でしたか

下田氏:2011年の2~3月に掛けて各ノードの切り替えを順番に実施しました。 大学の業務や研究・教育に支障が出ないよう、平日夜間や休日日中に作業を行いましたので、ユーザーにはほとんど気付かれなかったのではないでしょうか。
ただ、今年は東日本大震災の影響で電力の手当てが大変でしたね。夏場の電力不足についても、仮設発電機を手配して、主要部分の情報インフラを止めないよう停電に備えました。 ちなみに、情報基盤センターには大型UPS電源や空調装置などの設備を備えたハウジング室があり、止めたくないサーバやネットワーク機器を収容できるように、学内組織向けにハウジングサービスを提供しています。

最後に今後の抱負について伺えますか。

下田氏:実は、私は以前(2006年4月から3年間)NIIへ出向してSINET3の構築・運用管理に携わっていました。そこで培った経験やノウハウは、東大へ戻ってからも非常に役立っています。 今後もこれを活かして、SINETとUTnetのいいところを合わせたネットワークを築いていきたい。また、先にも触れた通り、SINETは大学運営や研究・教育を支える重要な基盤ですから、今後の設備増強やサービス・サポート力の強化にも大いに期待しています。

ありがとうございました。