衛星データの受信・処理・アーカイブおよびデータ配布

千葉大学 環境リモートセンシング研究センターは、衛星データの受信・処理・アーカイブおよびデータ配布などを行う全国共同利用施設です。
その活動内容とSINETが担う役割について、お話を伺いました。

樋口 篤志氏
樋口 篤志氏

千葉大学 環境リモートセンシング研究センターは、衛星データの受信・処理・アーカイブおよびデータ配布などを行う全国共同利用施設です。
その活動内容とSINETが担う役割について、同センターの樋口 篤志准教授に伺いました。
(インタビュー実施:2008年6月27日,更新:2010年1月15日)

まず、千葉大学 環境リモートセンシング研究センターの概要についてお聞かせ頂けますか。

樋口氏: 当センターはリモートセンシング技術の確立と応用に関する研究を行う全国共同利用施設として、1995年に設立されました。もともと千葉大工学部には、写真や印刷、画像などの分野で長い歴史と伝統があり、当センターも1986年に設置された「映像隔測研究センター」をルーツとしています。
一般的に、研究センターでは、取り扱う「事象」や「現象」を名称とするケースが多いですが、当センターではリモートセンシングという「手段」をセンター名として名乗っています。これは全国的に見てもユニークなのではないでしょうか。

具体的な活動内容を教えていただけますか。

樋口氏: 我々の業務としては、まず、「ひまわり」をはじめとする各種衛星の観測データを受信し、アーカイブやデータ配布を行うことが挙げられます。
衛星画像の解析を行うことで、大気や海洋、水循環など、地球表層に起きている変化を理解することができます。そのための素材となるデータを、世界中の研究者・研究機関に対して、Webやftpで提供するのが我々の役目というわけです。もちろん衛星データをそのまま公開するだけでなく、様々な処理を施してデータを高度化するといったことも行っています。
また、当センター自身でも、いろいろな研究活動を展開しています。たとえば、2007年から、東京大学 気候システム研究センター、名古屋大学 地球水循環研究センター、東北大学 大気海洋変動観測研究センターと連携して、地球気候系の診断に関わるバーチャルラボラトリーを形成しています。
各センターの名称を見てお分かりの通り、それぞれが得意分野を持つ専門集団です。こうした複数のセンターが連携して研究を行うことで、地球気候系診断の進展や学生の教育に大きな効果が期待されています。
当センターでも、日本・米国・欧州・中国の静止気象衛星の観測データを1時間間隔で受信し、全球静止気象衛星データセットの作成と公開を目指しています。

こちらで提供されている観測データは、誰でも自由に利用できるのですか。

樋口氏: 特に利用制限は掛けていませんので、研究上必要であればどなたでもご利用いただけますよ。大学や研究機関だけでなく、企業の方でもご利用頂いて結構です。
これまでの利用実績を見ると、年間で約10万件のデータがダウンロードされています。利用形態も様々で、特定の日時だけを指定して持っていく場合もあれば、まとめて大量のデータを持っていく場合もあります。日本国内だけでなく、海外からの利用も結構多いですね。

衛星の観測データを蓄積していくとなると、研究で取り扱うデータ容量はかなり膨大になるのではないですか。

樋口氏: そうですね。中には数メートル単位の解像度で画像を取得する衛星もありますし、500m~1kmの解像度で全球のデータを取ってくるものもあります。
こうしたデータを集めて計算処理をするのにも一週間、二週間と掛かりますが、その前段階のデータを集めるところがまず大変ですね。実際、一枚の図を作るのに必要なデータが50TBとかだったりしますので。

そうなると、大容量データに耐えられるシステム/ネットワークが必要ですね。

樋口氏: 毎日毎日数十GB単位でデータが増えていきますから、一番大変なのが、やはりデータを溜めておくためのストレージです。
昔は磁気テープライブラリ装置を利用していたので、データのハンドリングが結構大変でした。そこで、現在ではハードディスクを主体としたストレージシステムを構築して運用しています。

また、もう一つ大事なのがネットワークです。当センターのデータを外部に対して公開する上でも、我々が研究に必要なデータを外から取ってくる上でも、ネットワークが遅いとどうにもなりません。極端な例で言うと、海外のサイトから研究に必要なすべての衛星データを取ってくるだけで、一年掛かりの作業になったりするのです。
ネットワークのスピードが倍になれば、これが半年で済むわけですから、国際的な競争力を上げていく上でも大いに役立ちます。当センターの活動においては、大容量のストレージと並んで、高速なネットワーク環境が必須と言えます。

ネットワークの速さが、研究のスピードを左右する時代になっているんですね。

樋口氏: その通りです。しかもストレージは買ってくれば増やせますが、ネットワークばかりは我々が頑張ってもどうにもなりません(笑)。
幸い現在では、千葉大学 総合メディア基盤センターの協力もあり、SINETの1Gbps回線を利用して研究や各種のサービス提供を行っています。回線の帯域が太くなることで、研究者の活動にも良い影響が出るのではと思っています。

SINETの信頼性、安定性についての評価はいかがですか。

樋口氏: おかげさまで、非常に安定して使えています。特にトラブルで困ったりするるようなこともないので、普段はほとんど意識せずに利用していますね。個人的な感覚としては、「電気・水道・ネットワーク」といった感じです。
もっとも、研究用途として考えれば、水道よりもネットワークの方が、万一の際のインパクトは大きいでしょうね。大学の水道が半日止まってもそれほど困りませんが、ネットワークが半日止まったら大変ですから(笑)。

最後に今後の展開について伺えますか。

樋口氏: 最近では様々な目的の衛星が打ち上げられていますので、今後もできるだけ多くのデータを蓄積していきたい。現在は使われていないデータでも、どこかで新しい発見があれば、突然宝の山に化けるかも知れません。そのためには、とにかくデータを溜めておくことが必要です。研究者が「こういうデータを使いたい」と思ったときに、当センターが書庫のような形で貢献できれば幸いです。
また、先にも触れた通り、研究には高速なネットワークが欠かせませんので、SINETにも大いに期待しています。

ありがとうございました。